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下野新聞寄稿 〜下野新聞に寄稿している「県香港駐在員リポート」を転載しています。〜


18 中国の電力事情
―景気過熱で需給逼迫―

 「世界の工場」といわれて久しい中国だが、最近では景気過熱を危ぐする声が目立ってきた。昨年の中国のGDP(国内総生産)成長率は、SARS(新型肺炎)の影響をものともせず、過去5年間で最も高い9.1%だった。しかし一部では、急速に拡大する生産や設備投資に対して、電力や水の供給が追いつかない、原材料価格が高騰するといった問題も発生している。
 特に経済成長の著しい上海市、江蘇省、浙江省などの華東地域では、これからの夏本番に向けて、電力不足が深刻化すると予想されている。
 今年3月、在上海日本国総領事館や日本貿易振興機構(ジェトロ)上海センターなどが、華東地域の日系企業を対象に実施したアンケート調査によると、昨年夏に操業時間の削減や変更、使用電力量の制限などで、電力供給を調整された企業は、全体の53%にあたる177社に上っている。納期の遅延や生産量の減少のほか、人件費の増加や受注機会の喪失といった具体的な損害を被った企業もあった。
 最も深刻なのは本県と友好提携関係にある浙江省で、製造業の実に97%が電力供給を調整されたと回答している。省政府の担当者が「国民経済的には、電力需給の逼迫(ひっぱく)による影響は、SARSが与えた影響より大きい」と述べるほどで、一部地域では、自家発電機の導入を奨励しているという。
 上海市郊外に進出している日系企業の副総経理が、「3年前に進出した時には、電力が不足するとは全然考えていなかった」と言うように、華東地域の電力不足は、日系企業にとって、今や投資のリスク要因に数えるほど大きな問題になっている。先月、中国進出を念頭に浙江省の開発区を視察した県内企業の役員も、「まず何よりも電力事情が一番心配だ」といい、現地の状況について事細かに質問していた。
 一方こうした中国の電力事情は、日本企業にとって新たなビジネスチャンスだとの見方もある。ジェトロ上海センターの荒川正頼さんも、「2006年以降についても、電力の需給バランスが回復するかは、はっきりしない」と述べた上で、「自家発電機のほか、日本の送配電設備で用いられている技術など、日本が貢献できることはあるはず」と指摘している。
 いずれにしても中国は、日本にとって世界最大の輸入相手国であり、急成長する中国経済と日本とは、もはや切っても切れない関係になっている。そこで今夏見込まれている中国の電力不足についても、われわれは、もはやひとごとではいられないはずである。

 


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