戻る

下野新聞寄稿 〜下野新聞に寄稿している「県香港駐在員リポート」を転載しています。〜


04 広東省の強さ
―低廉、豊富な労働力―

 昨年は、2001年12月に世界貿易機関(WTO)加盟を果たした中国の、世界経済における存在感が一層増した年だった。「世界の工場」といわれる中国の中でも、香港に隣接する広東省の経済力は抜きん出ている。1979年に中国政府が開始した改革開放政策により、他地域に先駆けて海外に開放された広東省は、今やGDP(国内総生産)の10%以上を担い、全中国の約四分の一に当たる外国投資を受け入れ、また輸出額の約3分の1を占めている。この「中国最大の輸出基地」というべき広東省の強さの秘密には、低廉で豊富な出稼ぎワーカーの存在がある。
 広東省のワーカーの賃金は、残業代などの各種手当を入れても月額1万円から1万8,000円ほどで、上海などの華東地域と比べて一般に安いとされている。これは広東省に、内陸部からの出稼ぎ者を低賃金で大量雇用できる仕組みが確立されているからである。
 また、内陸部からやってくる人たちは、中国の戸籍制度上の制約によって、あくまでも「出稼ぎ」として一定期間終了後に出身地に戻らなくてはならない。しかし雇用者側にとってみれば、2〜3年でワーカーが自発的に退職するため、ワーカーの人件費はここ10年ほとんど上昇していないという。
 さらに限られた期間で少しでも多くのお金を持ち帰ろうとする出稼ぎ者は、残業を全く苦にせず、むしろ急な残業を依頼すると歓声が上がるのだという。
 一方、こうした中国人ワーカーの資質についてだが、「安かろう悪かろう」では決してなく、特にその器用さや視力の良さには、しばしば驚かされるという。広東省東莞市に本県から進出している企業の現地法人では、日本人なら両手を使って1枚ずつ行うレンズのはめ込み作業を、中国人は左右それぞれの手を使って、同時に2枚ずつはめ込んでいけるという。
 また本県をはじめ、アジア各地に生産拠点を持つ日系大手家電メーカーの社内でも、中国人ワーカーはほかの国のワーカーと比べて良質という評価を得ているという。日本の製造業の「中国シフト」は、中国の安い労働コストだけではなく、こうした中国人ワーカーの優れた資質にも後押しされているのである。
 しかし最近は、上海をはじめととする華東地域への投資が急増している。日本貿易振興会(ジェトロ)上海センターの丸屋豊二郎所長は、この現象を熟練労働者や高学歴者を多く抱える華東地域の労働市場が再評価され始めたからだと分析している。確かに今後、中国の産業構造が高度化すれば、労働集約的業種に依存する広東省経済、そして出稼ぎワーカー事情も変化を迫られることになるかも知れない。

 


戻る

 

© Tochigi Prefectural Government Hong Kong Office. All rights reserved.