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下野新聞寄稿 ~下野新聞に寄稿している「アジアの鼓動」を転載しています。~

100 第45回:佐野出身シェフの和牛懐石

香港「和牛懐石DEN」で腕を振るう五月女広之シェフ
香港「和牛懐石DEN」で腕を振るう
五月女広之シェフ(手前)=26日

 日本食が人気とはいえ、家賃や人件費が年々高騰し、流行のサイクルも早い香港では、長く経営を続けていくのは人気店でも大変なことだ。
 そんな中、開店以来8年間もミシュランガイドブックの香港・マカオ版に掲載され続けている和食店がある。佐野市出身の五月女広之(さおとめひろゆき)さんがシェフを務める「和牛懐石DEN」だ。客層はもちろんハイレベルで、著名人も多い。私が伺った時も、香港政府の高官がプライベートで来店していた。
 店は金融街のセントラルに隣接する上環(しょんわん)という地区にある。巨大ショッピングモールはないが、ギャラリーやカフェ、モダンなレストランなどが点在するエリアで、駅からは少し離れているが、運転手付きの車で来店する客が多いので問題はない。
 ミシュランガイドにも「和牛だけではないから混乱しないように」と書かれているように、料理は和牛尽くしではない。築地をはじめ日本全国から毎日入荷する季節の魚介や野菜が中心で、和牛はコースの中に溶け込むように上品に使われる。締めにいただく「海栗(うに)トリュフ土鍋ご飯」が人気だ。
 五月女シェフのキャリアは銀座の高級寿司店「久兵衛」に始まる。初めは寿司職人の修業をしていたが、もっと幅広く料理を極めたいと和食料理人の世界へ飛び込んで行った。東京だけでなく、ホテルオークラアムステルダムの「山里」、ロンドンの「Nobu」など海外の超一流店での経験も重ね、ロンドンでは、日本の超有名芸能人が、五月女シェフの携帯に直接予約してくるほどだったという。
 香港へ来ることになったきっかけは、現在のオーナーが東京のお店まで自家用ジェットで食べに通うほどになってしまい、香港にお店を開いてほしいと口説かれたことだそうだ。
 このようにすごい経歴を持つ方なのだが、普段はとても気さくだ。地元が大好きで、栃木の食材も積極的に使ってくださる。私がいただいたコースでも、東京フード(佐野市)の万葉柚子釜(ユズの身をくり抜き、皮をだけにしたもの)が香り高い器として供され、和牛には同じく東京フードの柚子胡椒が添えられた。日本酒は第一酒造(佐野市)の「開華」だ。さすがにコースに入れないものの、イモフライが大好きで、賄い食では早川食品(佐野市)のミツハソースをたっぷりつけて召し上がっているそうだ。
 震災以降、香港にはいまだに栃木の生鮮野菜・果物が輸入できないが、使いたいといつもおっしゃっている。一日も早く香港への輸出が解禁になることを願うばかりだ。

 

間山憲一(まやま・けんいち) 1992年県庁入庁。経営支援課、国際課などを経て日本貿易振興機構(ジェトロ)に出向。4月から現職。宇都宮市出身・46歳

 

 

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