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下野新聞寄稿 〜下野新聞に寄稿している「県香港駐在員リポート」を転載しています。〜


29 反日デモ
−今後も可能性、予断許さず−

 この4月に新駐在員として香港に赴任した直後に、中国本土における反日デモの洗礼を受けた。
  4月9日、10日と北京市を始め上海市、広東省などで大規模な反日デモが行われた。特に香港に近い広東省深セン市や広州市では、両市合わせて3万人もの大規模なデモとなり、日系デパートや日本料理店の窓ガラスや器物が、投石などによって破壊されたほどである。
 テレビで中国本土での暴徒化する一部のデモ隊の映像が流れてはいたが、私の住む香港では平静さを保ち、ともすれば対岸の火事のような感じさえ受けた。
 しかし、このデモによる各地の被害状況が、私たちの想像を越えるものであったため、栃木県香港駐在員事務所は急きょ、県内から中国に進出している企業や駐在員事務所に対し、デモに関する「注意喚起」をファクスや郵便で送ったのである。
 特に中国本土においては、マスコミ等も報道規制をされている場合がしばしばあるため、中国に駐在されている企業の方々が反日デモの情報が得られないことがある。このため、当事務所は今までに合計4度の情報提供を行ってきた。中国では情報が不足しがちなので、このような情報提供は非常に重要である。後に企業の方々から感謝の言葉をいただいた。
 週を重ねるにつれて過激になる反日デモに対し当事務所は、進出企業などの被害状況を把握するため、「緊急アンケート」を二度にわたり実施した。幸いに二度とも現地企業などからは被害はない旨の回答であった。
 同時に、深センに工場を立地している企業に電話で被害状況を聞いたところ、デモは街の中心部で行われる場合がほとんどで、工場は郊外の工業区にあるため、被害はなかったという話であった。
 しかし、平静であった香港でも4月17日には大規模なデモが行われた。当初、デモに参加する者は千人程度という情報であったが、実際は予想をはるかに超える約5千人が参加(香港警察発表。主催者発表は1万2千人)。私も状況を把握するため、このデモを取材に行った。デモは、中国本土のデモと違い統制がとれており、デモのリーダー格の人物が拡声器を使ってスローガンを大声で叫び、後に続く参加者が同様のスローガンをシュプレヒコールするという、日本でもよく見かけるものであった。
 しかし日本人や日系のデパートなどには危害を加えなかったものの、規模の大きさに、私も正直驚いた。香港は中国本土と違い高度に都市化が進んでいるため、このような大規模なデモになろうとは予想だにしていなかった。デモに参加していた香港人を見ると、主に中高年層が多かったことから、やはり香港も第2次大戦中、日本に占領された暗い過去があったことを、この時思い知らされたのであった。
 ここ最近は、中国警察も本格的に反日デモの封じ込めをしているため、大規模なデモは行われていないが、今後もデモが行われる可能性はあり、予断を許さない状況である。当事務所としては、県内からの中国進出企業等に対し、今後も的確な情報を提供することで責務を果たしていきたい。

井上 彰(いのうえ あきら)

1993年、県庁入庁。企画調整課、産業政策課、日本貿易振興機構(ジェトロ)などを経て現職。佐野市出身の37歳。

 

 

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